kyokotada: 2005年8月アーカイブ

 当初はどーなることか、と思いました。
 何しろ、箏に尺八です。
 どんな音域で、どんな音が出るのか。
 果たして、音を出したとき、どのような雰囲気になるのか。
 「はてな」の多いユニットはその上、この2人の演奏家がアメリカ人である、というまた別の未知数も含んでいたのでありました。

 箏のカーティス・パターソンとは、一緒に英語の本を制作したことがある。けれど、どちらかといえば、仕事より飲み仲間という感じ。私たちを引き合わせた作詞家の来生えつこさんとともに飲むことが多い。
 知り合ってもう5~6年経つ。かなり以前から、「お互い音楽をやっているのだから、本ではなく、ライブでコラボしたいものだ」と話し合っていた。
 彼は、古典の箏曲演奏のためのユニットをもつ他、小椋桂さんのステージにも参加している。口ばかりでなく、いいかげん始めないとね、という気持ちで、私たちは渋谷の「公園通りクラシックス」のスケジュールを取ってみたのであった。

 メンバーは、互いの知り合いを持ち寄りでということにした。
 カートは、尺八とフルートのブルース・ヒューバナーとパーカッションの大石真理恵さんを、私はギターの佐藤浩司さんとベースに多田文信を呼んだ。

 選曲段階で、図らずも双方の文化の違いが浮き彫り。
 日本人なら当然知っている曲をカートは知らず、アメリカ人なら知らぬ人のない曲をこちらが知らなかったりする。
 まずは、箏と尺八だから童謡やら唱歌やらを選んでみた。
 他は、カートの好きな歌謡曲とアメリカのポップス。
 2人にゆかりの来生えつこさんの曲。
 そしてカンツォーネにゴスペル。

 曲が出そろったところでアレンジに入る予定が、何だか多忙でスケジュールが空かない。気分的にやや追い詰められた頃、アメリカにいらっしゃる母上が病状悪化でカート帰国。
 多田文信、抜けられないレギュラーの仕事が入ったため、本番できず、リハ無しでも対応してくれそうなベースを探し始める。数日かかって杉山茂生さんに決定。
 リハ日の数日前から、徐々にアレンジ始め、私と文信で前日にやっと完ぱけ。
 額の汗を拭いながら(?)楽譜の清書にコピー、ああー、やっと間に合ったーー。
 しかし、自分用にカンペ歌詞カードを作ってプリント・アウトしようとしたら、黒インク切れ。仕方なくカラーで出力。まったくなんでこう、次々と難関が立ちふさがるのか。

 リハは、何と5時間ぶっ続けてやりました。
 これで何とかなるか!?
 次の日、リハの音源と楽譜を杉山さんに渡して説明。
 当日は本番前に2時間ほど、切羽詰まって音合わせ。
 そして本番。

 いやー、どーなる事かと思いましたが、これが意外ととても評判よかったのです。
 「面白かったー」
 という感想を沢山頂きました。
 私の狙いとしては、単純に面白くしたかったのです。
 びっくり箱みたいに。
 こんな曲、あんな曲、それを面白いアレンジで。

 ドタバタでしたが、最後はうまくまとまりました(つもり)。
 「勇気がある」
 とは、ギターの佐藤さんの感想。
 しかし、やってしまえば何とかなるものですなぁ。
 浜辺の歌、おぼろ月夜、あわて床屋、リンゴ追分、コーヒー・ルンバ、Will You Love Me Tomorrow セカンド・ラブ、シルエット・ロマンス、ボラーレ、サマータイム、ゴスペルメドレー(Swing Low,Nobody Knows, Amazing Grace)。
 これを真面目にやる快感!
 会場いっぱいに来てくださったお客様と、メンバーの皆様に心から感謝です。

田舎者合戦

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 GLAYとEXAILEが一緒に盛り上がっているPVを見て、「なにこれ」と思った。ロッカーとストリート系のダンサーが仲良くて良いのか?という疑問が湧いたのである。
 別に、いがみ合って欲しいとは思わないが、それぞれ、自分たちの音楽性やら、ファッション・センスやらにこだわった暁に、今日のスタイルがあるんではないか、と思っていたためである。

 すると、ヴィジュアル系バンドのファン歴、すでに10年にならんとする長女が、「いいんだよ、これで」と言う。
 彼女は中学生の時から、コアな追っかけさんで、友だちにはGLAYのファンクラブ番号17番という早い者勝ちもいた。はじめは、GLAYだのラルク・アン・シェルで、それからデイル・アン・グレイとかプラスティック・ツリーとか、なんだかんだいろいろあって、現在はナイト・メアというバンドらしいが、とにかく、彼女の中・高校時代は、夜のテレビは全部、テレビ神奈川とかのバンド番組であり、わたしも、その歴史を一応把握してしまうほど、ヴィジュアル系バンドを見せられ、語られて来たわけである。

 その娘は、このコラボレーションを歓迎していると言う。
 「一体、どういうコンセプトだっちゅうの?」
 「これはね、田舎者合戦」
 彼女によれば、「俺たち売れたから、一緒にかっこつけっぺ」というのがコンセプトなんだそうだ。
 「田舎者が大量に集まってカッコつけてみて、その中でさらに田舎臭いのは誰か、という興味深い見方ができる」
 というのである。

 たしかに、みんなすごく力を入れてカッコつけてるのだが、ホントに田舎臭いかも。
 私自身が田舎者で、GLAYとは同じ北海道出身だから、そんなこと思いながら共感しきりではある。 

 田舎者はどんなに成功しても、どうしたって都会の人、さらにはセレブリティとは違う。
 私も若い頃、散々カッコつけた気でいたが、親の東京在住の友だちの子女、それこそ幼稚園から東京の名門私立にお通いになり、バレエとピアノを習われている同年代の女子に出会ったときの驚きと気後れは、多大なインパクトで私に「分相応」という言葉の意味を教えたものだ。

 ただし、どちらかが優位であるとか、より恵まれているとは考えていない。
 彼らの土俵で競争原理にまみれようとすれば悔しいことだらけだろうが、そんな土俵はないと思えば、ただ、別の価値観に依拠した人々と考えるだけで済むからである。

 そんなことを、ぼんやり想いながら、改めてGLAYとEXAILEを見れば、ファッションの差異なども気にならなくなり、ただ、想定外の成功に恵まれて闇雲に頑張った若者たちが、大挙して仲間確認をしている様子に、微笑ましさを覚えるのであった。

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