kyokotada: 2009年3月アーカイブ

最近、テレビでよくムッシュを見かける。
久し振りにアルバムを発売するかららしい。
何とあの、AVEXから、色々なアーティストとコラボレーションしたアルバムが出るのだ。
私は20代半ば頃、ムッシュとタモリがデュエットした曲のコーラスを頼まれて、ラジオとテレビに出たことがある。なぜ私だったかというと、黒のロングドレス着用でという注文があったため、そういう仕事用のドレスを持っていた私に声がかかったのだ。ムッシュのバックバンドの人と、たまにライブをしていたご縁もあり。

その時に、楽屋でムッシュから
「ジャズ歌ってるんだって、若いのに偉いね。ガンバってね」
と励まされた。
ムッシュの父君は、ティーブ釜氾さんというジャズ歌手の草分け的な方。
ムッシュもそういう戦後の音楽シーンの先端のセンスを浴びて生きた人だ。
私は中学生の頃、死ぬほどグループサウンズが好きだった。
大人になって、ムッシュやショーケンなど、その頃のスターたちに直に会うようになって、とても不思議な気持ちがした。

ところでムッシュは、70歳である。
それで、あのビジュアル。
テレビでは、誰もが異口同音に年の割にお若いですねぇ、と感嘆している。
でも、それ言わない方が良い、という気がする。
何歳であるかを、他人から言挙げされると、せっかく忘れている事実に対する自覚が生まれてしまうから。
本来は、自分の年のことなんか忘れて好きなことに没頭すべきだ。
お若いですね、は余計なお世話。
褒め言葉には毒があるぞ。

人は、ずっと同じ気分で生きるべきだ。
自分が最も濃ーく感動したあの頃と同じ心で。
大変な日々に押しやられて、なかなかそうもいかないときには、懸命に思い出す。
思い出す努力をする。
友達みんなでバカなことをやってゲラゲラ笑ったり、ひとつの曲に魅入られて100回続けて聴いたり、誰かを好きになって何日も顔が火照ったり、友達にわがままを言いすぎて喧嘩になったり、腹ぺこなために美味しさに感動したり、劣等感を持ったり、優越感を持ったり、怒ったり、泣いたり、憧れたり、失望したり。
そういう事がほんとに当たり前で、細かいことを考えるより先に笑い声や涙や手が出ていた頃を。
懸命に思い出す。
すると、よみがえるよ、あの頃の気分が。

ムッシュはきっと、そうやって暮らしているから年のことを考える暇がなかったのだ。
色々あっても、音楽への愛で全ては帳消し。
色々あっても、いい音がするとそれで他の事なんてどうでも良くなるのよ。
羨ましいと思いませんか。

もうひとつ、ムッシュが羨ましいのは、堺正章と友達だということ。何時間も周囲を笑わせる才能のある友達がひとりは欲しい。
堺さんは、すごいもんね。 

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