「今日さ、突然りえちゃんが乱入してきたの」
中学三年生の息子が鼻を膨らませて言う。
笑いたいのをこらえているのである。
休み時間に、学校の廊下で友だちと音楽の話しをしていたそうだ。
そこに突然、乱入割り込みをされたらしい。
「そしてさ、アイアン・メイデンの新曲だかについて(※後日確認したらメタリカであった)、熱く語るわけさ」
「ほー、間違いなくそれは職員室内に友だちがいないね」
「さあ、知らんけど...」
りえちゃんというのは、息子の学校の英語の先生である。
髪が長く、しかし分け目の辺は少し薄いかも(ごめん)。
ちょっと太っていて眼鏡をかけている。
腰に手を当てて、足を踏ん張って立ち、男子生徒などに対しては、野太い声で指示したりしている。
乗っている車は、赤だか黄色だかのスポーツカーだという。
彼女は一体何ものなのだろうか。
中学校の英語の女性教師、と聞けば、清楚とか真面目そうとかいう先入観を持ちがちである。が、りえちゃんは、素晴らしくその定型を裏切ってくれちゃっている。
私的には応援したくなるような人。
だが、私の価値観はおかしいので、当然、一般的には保護者受けは良くない。
「変わった先生よね」
で、何もかも台無しなのである。
しかし、音楽狂いの我が息子が、英語のスピーチの時間に
「将来はロック・ミュージシャンになって、世界ツアーをしてみせる」
と語ったら、感動した彼女、突然、正体を明かした。
実は彼女は、ヘビメタ・マニアであった。
以来、ジューダス・プリーストだのマリリン・マンソンだのの名前が出まくり、さすがの息子もびっくり仰天。
私は拍手喝采ですが。
だって聞いて下さい、キリギリスのような顔の息子の担任は私に向かって
「不良化の3Bをご存知ですか。バイト、バイク、バンドです」
と真顔で説教したのですよ。
私思わず手を挙げて
「はい、私がバンドです」
と言ってやろうかと思いました。
ま、とにかく、りえちゃんは、息子たちが廊下で話してるところに通りかかり、わずかでも
「リンキンが」とか「レディオ・ヘッドがさぁ」
あるいは、
「ストラト...」
などと聞こえると、すかさず乱入して、語りまくることと相成ったのです。
素敵!
そういえば、別の話ですが、先日息子の友だちに捜索願が出た。
夜10時になっても、何の連絡もなく家に帰らない。
一人息子さんの親御さんたち、誘拐かと真っ青になったのです。
だが、その頃、彼はうちの息子と代々木のアシッド・マンのライブで、絶叫していたのでした。
息子は気分が悪くなって最前列から撤退したそうですが、その友だち、しっかりMTVだかの中継に映り込んでました。
その日ライブ聴きに行くこと、ちゃんと親に言ってあったそうですが、親は忘れちゃったんだって。
捜索願が10時に出されたことについて、それが早いか遅いか、息子の友だちの間ではひとしきり議論があったようです。
色々ある。
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