TADAKYO のユニット紹介 その1

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續木徹さんとのデュエット

 東小金井にハーギン・チャカ・アラウという、特別なお店がある。
 ライブハウスというよりは、ショットバー。
 それも、都内の繁華街にあるような、メタリックだったりダーツがあるような洒落た店ではない。
 店内は木調というか、手作り山小屋風。
 そして、かかっている音楽は変にマニアックだ。
 例えば、サム・クックとかホーギー・カーマイケルの弾き語りなんという珍しい代物が何てことなくLP版で回っていたりする。
 マスターは、「しんさん」と呼ばれているいかつい上にもいかつい貫禄なおじさんで、でも、先日歳を訊いたらば、私より10歳も若かった。
 マスターの他に重要なスタッフは、「あきらくん」。
 しんさんがプロレスラーみたいな体型だとすると、彼は走り高跳びの選手のよう。
 その二人がだいたい店でお客をもてなしている。


 店にはなぜか、トイレの入り口の横にアップライトのピアノがあり、正面の壁にギターが色々ぶら下げてある。よく見ると、PAらしきものもある。
 しんさんの奥さんはフィリピンの方で、歌手だったというから、きっとそこで歌っていたのに違いない(今は子育て中)。
 他にも、常連客にブルース歌手などがいたそうで、何となく、「ライブするべ」という感じで機材をぼちぼち揃えていった様子だ。

 私の家からも近いそのお店は、歌手復帰したばかりの私に、「出てもいいよー」と言ってくれた。
 もう、4年ほど前のこと。
 するとその近所に、なんと大学時代からの友だち、ピアノの續木徹さんが住んでいたではないか。住んでいるばかりか、その店のお馴染みさんだった。
 私たちは早速、月1回そこでライブをやることにした。
 徹さんは、それから間もなく結婚され、ひじょーーーに張り切って練習に燃えていたし、私も、そこで経験を積み、音楽の勘をとり戻したいと思った。

 デュエットというのは、やってみるとものすごく難しい。
 リズム楽器がないので、ひとりずつがしっかりリズムをキープし、さらに互いの呼吸を聞き、ああいえばこういう、そうきたらこうするべ、と丁々発止を続けなくてはならない。
 それを3ステージもやるのである。
 1回分、50分くらい。
 えらいもんである。

 出演を続けるうち、色々なお客さんが、それぞれのアプローチで応援してくれるようになった。
 カウンターから声をかけてくれる「やまちゃん」は、いつも何言ってるのか余り分からないけれど、買ったばかりの本を読む前に貸してくれたりする。そして、「頭で歌っちゃーだめだめ」と笑いながら言うのである。
 それは私にはとても的確なアドバイスで、以来、やまちゃんが来てくれると、その言葉を思い出し、ハートで歌うことを心がけるようになった。

 「はせどん」と「たべいさん」とは、いっつも読書の話題。好きな作家が共通していたり、他の人が読んでいそうもない本を全員読んでいたりが発覚して、大いに盛り上がってしまう。で、会うと「ところで最近の収穫は何かありましょうか」と本漁りの話などする。オフ会の雰囲気かな?

 他にも、たくさんのお客さんが面白くて面白くて、私はハーギンに行くのがとても楽しみだ。
 徹さんは赤ワインを飲んで真っ赤になり、私は、最後のステージ前だけ白ワインを飲んで少しリラックスする。
 つまり「紅ばら白ばら」みたいな感じ?

 こんな事を言うとおこがましいが、この足かけ4年の間に、私たち2人はとても上手くなった気がする。
 もちろん、徹さんも私もハーギン以外の場で、せっせと経験を積み上げているわけだから、2人でやっていることで上手くなっているという意味ではないのだが、この数年間は2人ともに色々成果があった、ということが考えられる。
 そういうことを想わせるユニットは、とても貴重だ。

 最後に、とっておきの話。
 当初、私は自分のあまりの下手さに、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 無名でお客さんも呼べないと、チャージ・バックのギャラも少ないし...。
 それで謝ったりしたのだが、彼は「良いんだよ、Kyoやんと一緒にやることに意義があるんだから」と言ってくれたのだ。
 何の手がかりもなくおろおろ始めたライブだったので、その言葉は私には燦然と輝いて届いた。
 私は、一生、續木徹さんに足を向けて寝られない気持ちなのです。

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このページは、kyokotadaが2005年2月 8日 18:55に書いたブログ記事です。

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