ガル・コスタという、ブラジルの超有名な歌手のライブDVDを見て、心底感心。昨年、ブラジル人生徒のアンジェリカさんが、帰郷した際のお土産に下さったもの。ボサノヴァの御大、トム・ジョビンの名曲を20数曲歌っている。
ボサノヴァといえば、静かーーに歌うものだと思っている人が多いが、全体を見るとそうとばかりも言えない。サンバはかなり張り上げるし、ブラジル全体の音楽の種類の中で、抑制を効かせて歌うのがボサノヴァだけ、というような事情が見える。
ガル・コスタは、声量のあるプリミティブな臭いの強い歌手であり、トム・ジョビンをすら、高らかに豊かに歌い上げている。それが気に入った。
さらに、バックのバンドが素晴らしい。ともに見たピアニストの信田さんが「近年なかったカンドーだ」と興奮し、何曲か同じようなアレンジでやってみたりした。
同じようにやるからには、ポルトガル語でなくてはならない。ポルトガル語は、スペイン語とかイタリア語と似ているが、リエゾンが多くてフランス語みたいに発音する部分もある。耳を澄ませ、微妙な口の開け方やタイミングを聴きまくった。
普段は、スタンダードやポップスが多いので、歌う曲には英語の歌詞が多い。たまに、カンツォーネやシャンソンも歌うから、イタリア語やフランス語を覚えることもある。中では、ポルトガル語が最も難しかった。ボサノヴァという、洗練されたリズムに乗るとなおさら、発音以上にタイミングが難しい。
最近は、カラオケの大勢の生徒に教えるために、演歌から歌謡曲、J-popまで日本語の曲も様々歌ってみたりする。
歌は、何語で歌うべきだろうか。こんな事をしていては、主体性がないみたいじゃないか。やはり、日本語の曲をもっと追求した方がいいのかな...。
独り悶々と考えたりもした。
ある時、ふと思った。
オペラの歌手たちは、イタリア語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、他にも何でもありである。作曲家の出身国に従って、人気演目には様々な言語が用いられている。役をもらうためには、多くの言語で歌えないと可能性が狭まる。
「そうか! なら、私もなんでもいいや」
歌ってみれば、それぞれの国の音楽は、それぞれの言葉のリズムに乗っかっていることも分かる。気持ちよい。
歌に復帰して6年目。最大の収穫は、どんな種類の歌もこだわりなく歌えるようになったこと。「あれ歌え、これ歌え」と背中を押されて、初めはおずおず取り組んで、やがて「おおー、これか」と歌い方を発見する。楽しかった。
実際、オランダの歌手(ローラ・フィジィ)、ブラジル出身の歌手(イリアーヌ)、ドイツ生まれの歌手(ケビン・レトゥ)、みんな出身地の言葉に寄りかからず、貪欲に多言語で歌っている。多分、本格的な発音でないものもあるはずだ。だから別にいいんだ、と決めた。曲のリズムを生かすために色々な言葉で歌おう。
そして、私のこの先の興味はなんと日本古来の「義太夫節」だったりする。「地唄」も良さそう。ある仕事のために、日本の伝統音楽を調べているうちに、幼い頃習った「日舞」の曲がどのように分類されていたかを再発見。むくむくと「日本的様式美」あるいは「日本的発声法」に興味が増してきた。
極端な「習い事好き」は、この先も永遠に治りそうもないみたい。
2~3年したら、和服で三味線弾いているかも!!
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