前衛的なボタン

user-pic
0
 受験生の息子がいる。
 私が受験生だったときより、ずっと楽しそうに勉強している。
 偉いなーと感心する。
 たとえ、とっかかりが難儀でも、楽しくなるまで、あれこれ飽くなき追求をしているようだ。
 たとえば、苦手だった世界史は、予備校の名物先生の授業に会って、それこそ目からウロコ、世界が拓けた、とか。
 名調子の講義は、CDにもなっているので、それをipodで聴きながら通学している。
 毎日のニュースで、様々な国の事件が報道されると、必ずその土地で世界史ネタとなることを開陳し、講義してくれる。
 そのようにして、何だかいつも興奮しながら勉強している。
 本当にやりたいのは、英語で、それを使って世界中の人と知り合いたいそうだ。色々な国に旅もしたいそうだ。健康だね。
 
 前置きが長くなってしまった。
 その息子に、コートのボタンが取れたので付けておいて、と頼まれた。
 いつもは、明日で良いかとか、いつまでに付ければよいのかとか、先延ばしの算段をする私だが、その日は夜だったにも拘わらず、コンディションが良かったので、快く裁縫箱を出して、速攻付けてやった。
「さっさとやればいいのよね」
 苦手なことを成し遂げたので私は満足し、次からもこういうことはさっさとやろうと心に誓ったりしたのだった。
 
 しばらくして、息子にこう告げられた。
「今日さ、友達が俺のコート見て、何それすげー、と言うからよく見たら、こないだ付けてもらったボタン、裏返しだったよ。俺が着てると、すげー、って感じに見えるらしいよ、前衛的で」

 良いと思ったのになー、さっさとやって。 

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://tadakyo.web5.jp/mt/mt-tb.cgi/95

コメントする

このブログ記事について

このページは、kyokotadaが2008年2月 6日 20:12に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「2008年 明けましておめでとうございます」です。

次のブログ記事は「海との出会い」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。