「Y字路」のシンクロニシティ

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 横尾忠則は、「Y字路」の絵をライフ・ワークとしている。
 先週は、毎朝10時からNHKで、「人生の歩き方」というインタヴュー番組をやっていたので、楽しみに見ていた。
 横尾忠則の略歴。
 わがままだった子どもの頃から、美大受験し損なった話、グラフィック・デザイナーとしての大活躍、インド行き、そして画家として生きる現在と自身の年齢についてなど、自然体とはこれだ、と思わせる軽やかな話が続く。
 軽やかに話す内容は、もちろん、密度が濃いのだけれど...。

 さて、Y字路は、不思議な空間だ。
 狭く、危ない感じがする。
 直進しようとした車が、うっかり突っ込みそうな予感。
 両脇を、路に挟まれた正面の家の窮屈そうな佇まい。

 横尾忠則の絵が好きと言うよりは、人が好きだった。
 ちょっととぼけていて、でも、悲劇的な顔つき。
 運命にこづき回されて、もうどうにでもして、といったような。
 72歳だが、赤いパンツに緑のジャケット、パナマ帽も似合って、異常に若い。

   滝の絵はがきなど、彼のコレクション好きには、いつも首を傾げてきたのだが、この番組を見てY字路に執着せざるを得ない無意識の存在が伝わってきた。
 自身では、なぜこんなにY字路を描こうとするのか、分からないらしい。
 人が本当に打ち込む事柄には、現実的に表現できる理由は無いことが多い。
 各々の無意識は、底流を共にし、混ざり合い、影響し合う。

 木曜日、渋谷に出た帰りに、ふと思い立って友人を食事に誘ってみた。何を食べようか、メールするうち、その方の義弟がやっている料理屋さんに行くことになった。
 電車を降りて、西武柳沢の駅から、寒風の中をどんどん行く。
 共通の知り合いが胆石を患って入院した話などしながら歩いて着いた店は、実際、絵に描いたようなY字路の中央にあった。

 だが、それに気がついたのは翌朝になってからだ。その日は、横尾忠則の番組の最終回で、公開制作という観衆を入れてのパフォーマンス、120号のキャンバスにY字路を描くという内容だった。日本のどこかに、必ず在りそうなY字路。ところが、左の路を進むと、彼方に古代ローマの市街がある。
 その場面を見ながら、あっ、と気づく。
 昨日の店は、Y字路にあったよ、と。 

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このページは、kyokotadaが2009年1月20日 20:24に書いたブログ記事です。

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