「月夜の旅」モノラル盤

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「月夜の旅」は、ベースの金澤英明の発案により、ピアノの石井彰、ドラムの石若駿によるトリオでレコーディングした。それぞれのオリジナルとスタンダードが数曲。レコーディングエンジニアは、コジカナツルのレコーディングで金澤がノックアウトされた、青野光政(イデア・サウンド)である。
 青野氏と私は、1昨年、やはり金澤英明が、クラシックのコントラバス奏者、溝入敬三と柴田敏弥を連れて「春」という作品をものしたレコーディングの時に出会った。よくよく話してみると、それまで会ったことはなかったけれど、私の周囲にいるプレイヤーたちとよく仕事をしていた方だった。
 その青野氏。ヴィンテージマイクやコンプレッサーなどなど、レアで貴重な機材に埋もれて仕事をしている。たくさんのエンジニアに会ってきたが、この人は凝り方が尋常ではない。そして、アナログ時代から鍛えてきた音に対するセンスも驚異的に優れているのである。海外の録音を聞くときに感じる、「いつまででも聴いていたい音」を作ることの出来る、希少なエンジニアだと思う。
さて、「月夜の旅」は、トリオが全て同じ部屋に入って録った。ピアノ、ベース、ドラムが同一ブースに集まり、常日頃のライブと同じくアイコンタクトを取りながら演奏したのだ。その際に、青野氏は1本のマイクを「モノラル」用に立てていた。
ミックスの最中、青野氏は不用意にも金澤英明にモノラル録音を聴かせてしまった。当然、金澤から私に電話が入り、「モノラル盤も出したい」と興奮気味なのである。そんな予算はないので「だめだね」と答えたものの、私も、その音の素晴らしさを感じ取っているだけに、惜しいという気持ちは捨てきれず、結局、現在発売されているステレオ盤のライナーに、「モノラル盤お作りします」の告知を入れてしまった。
モノラル盤は、注文を受けてから、1枚ずつの手作りである。
それが、日々、話題を呼んでいる。
「諦めないで手作りするとは、なんていい話だ」と言って下さるライターさんもいて、ほっと救われた思い。
感動と熱意は、軽々に諦めたり、無駄にしてはいけない。

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このページは、kyokotadaが2010年5月19日 14:27に書いたブログ記事です。

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