長女は会社に持参するため、日経新聞を購読している。
ウィークデーは早朝に出勤してしまうので、私が読む間もないのだが、ある土曜日、朝刊を入れてふと見ると連載小説のところに変なイラストが描かれてあった。
「変」というのはつまり、卑猥そうなという意味であるが、もわっとした雰囲気のベッドシーンの挿し絵が気になったので、つい読んでしまった。
するとそれはとんでもないエロ小説であった。
あれま、と思って作者を見ると渡辺淳一先生ではないか。
どうやら『失楽園』の二番煎じであるらしい。
『失楽園』について、一般の女子どもは知らなかったが、当時のサラリーマンたちは狂喜乱舞であったと聞いている。
部数が飛躍的に伸びたとか。
「あれは革命的だった」と感激する人を見たことがある。
今回は、『愛の流刑地』だったかな?
題名も凄い。
何しろ流刑地である。
不倫という行為でしか反社会的になりようのない貧しさ。
当然、内容は幼児のようなのである。
かなりの程度幼稚な男が、ただ若い人妻というだけで他にあまり個性の無さそうな、つまり今の時代の女から見て、「なにこいつ」と思う以外ないようなつまんない女性にとことん夢中なんである。
どこがつまらないかというと、彼女不気味なくらいボキャブラリーがない。
頑張る男がセックスについての感想を訊いても、ただ「はい」とか答えるのである。
これは、頭が悪いか、カマトトか、何か企んでいるか、勘違いしているかのどれかてある。
もっぱら主人公である「菊治」の視点で書かれているから、菊治にとってはそれが奥ゆかしいとか、謎めいているとか感じられて、魅力倍増となるらしいのだが、今どき普通ならこんな女いる訳がない。
2ヶ月前に娘に「凄い連載小説載ってるねぇ」と言ったらば、
「会社の女性社員みんなで、菊治は調子に乗りすぎだと呆れている」
と言っていた。
先日、「連載小説の評判どう」と訊いたら、
「決算期で忙しかったから、誰もそんな話はしてない」そうだった。
菊治はひとり、決算期も年度替わりもない流刑地のような荒涼とした世界で、幻想の愛に燃えているのだろうか。
シュールにもならん、残念。
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