レコーディングで、珍しく固まった

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 急に思い立ってレコーディングをした。
 いえ、私の、ではなく、遭わせてみたいミュージシャンを呼び集めてのこと。
 ひとりは、毎度おなじみの加藤崇之ギター。
 彼のユニークさは、多分こういう堅固なリズム隊によってより際立つだろう、
と考えて集めたメンバーは、
 松下誠ギター、多田文信ベース、宮崎まさひろドラム、である。
 つまり、ツーギターのロックバンド体裁で、ロックにとどまらない音楽をやってみようという企み。
 曲はすべてメンバーのオリジナル。
 それぞれが、既に持っていた曲、あるいはこのメンツでやってみたいと思う曲を書いて持ち寄り、インターバル1週間で、2日間録ってみた。
 第1日目は、初顔合わせのメンバーもいたため、多少固く、プレイもやや緊張ぎみだった。しかし、それすら効果のひとつと化し、緊張感がうまく働いて素晴しくアグレッシブな雰囲気が出ている。
 私は、企みが予想以上にはまり、今までどこにも無かったようなサウンドが生まれたのを喜んで良いはずなのに、うまくリアクションができない状態に陥った。
「かっこいい」とか「感動する」以外のものが沸き上がってしまったのだ。そして、その印象をどう表現すべきなのか、術がない感じだった。
 感情が出てこないような、妙な気分...。
 実際、2回目のレコーディングに来た松下誠が私に、「前回って体調悪かった?」と訊いたくらいだ。
 それは私が、固まっていたからに違いない。
 だが2回目は、全員、旧知の友だちのようにリラックスし、自分丸出しで演奏した。
 私も、オリジナルではないが、1曲歌で参加し、何となくアルバム1枚分、全曲録れてしまったのであった。
 レコーディングは、トータルにしてわずか8時間ほど。
 それで7曲完成である。素晴しい。
 全員で、初めての楽譜を見ながら、作曲者の説明を聞き、1回通してリハーサルしたら、次には本チャン。それが全て。
 2テイク以上録った曲は1曲のみ。
 メンバーは、1テイクめが最高ということを経験によって知っており、何度もやるなんて新鮮さに対して申し訳ない、という気分だった。

 同じような意味で
「もったいないからあまりたくさんリハーサルやらないでおきましょう」
という発言の出たライブもあった。
 石井彰ピアノと金沢英明ベースとともに、うちのスタジオでライブをしたのだが、この「もったいない」という言い方が、まさに今回のレコーディングの雰囲気と同じだった。
 私の歌はメンバーの知っている曲ばかりなので、本番に於ける全員の最初の発想、アドリブをできるだけ新鮮な気持ちで楽みたい、ということなのだ。
 リハーサルを繰り返すたびに、生まれ出る発想に託すわくわく感は薄れ、やがて緊張感も集中力も緩くなる。
 せっかくのライブで、そんな事態を招くのは不本意である。
 じつに「もったいない」

 レコーディングメンバーもライブのメンバーも全員、豪華な音楽キャリアを持っている。
 その過程で、何千曲、ひょっとすると、万に上る曲を演奏している。
 それら、日々の演奏の経験が、ひとつずつの曲に結晶し続ける。
 どんな曲をやっても、その中に生涯にわたる音楽への愛情や情熱がアイディアとともに溢れんばかりに注ぎ込まれるのだ。
 プレイヤーにとっては、究極の遊びであり、リスナーにとっては、至福の時。
 コントロールルームで、誕生したばかりのセッションを聴きながら、しみじみスタジオを見回し、人生、何がおこるか分からないものだ、と感じ入った。 

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このページは、kyokotadaが2008年7月28日 20:21に書いたブログ記事です。

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