ミュージシャンと言えば聞こえはよいが、つまりはバンドである。アーティストとか自称する人もいるが、私達としてはかなり恥ずかしいので、舞い上がりもせず卑下もせずとなると、やはりミュージシャンということになる。
この世界に住む人々は、実に良く離婚する。
初婚のまま続いていて、しかも子どもが1人っ子でないという家庭は、レアである。
夫がミュージシャンである場合は、妻が仕方なく貧乏を続けるか、夫以外の収入源を作り出して離婚はしないまでも夫とはほとんど関係なく暮らすか、同じ畑で共稼ぎをするか、である。
ミュージシャンであると、人はどのようであるかと言えば、まず収入は少なく、しかも不定期で、不安定で、我が儘か性格異常で、日常の生活時間帯がずれている。
つまり、病気ではないが、正気でもない、という人々。
面白がろうとすれば、すごく面白い素材ではある。
私は、ついにミュージシャンと結婚して3児を生み育ててしまった。
うっかりした。逃げる隙を逸したという気持ちだ。
それは、若さ故に知恵がなかったと同義で、この割に合わない日々は、一般の人と結婚した女性たち、どんな人に説明しても理解はしていただけないだろうと思う。
娘2人は堅気な仕事に就き、自立している。私も、自立した。そうしないと発狂しそうだったためだが、私の親兄弟は、好きでそうしているんでしょ、と言ったきり一切援助してくれなかった。それで自立した。良かったのかも知れない。
人の人生は分からない。
お嬢に育った私が、毎日仕事ばかりしている。
虫も殺せぬ度胸無しが、大変図々しくなった。
そういえば、最近、東大卒のジャズ・ミュージシャンという人に良く出会う。
東大を出ても、研究者になると儲からないそうである。同じ儲からないなら、音楽の方がいいやと思って...、ということらしい。
観察していると、人は、簡単な道が嫌いだ。
つまんないから。
それで、ハラハラドキドキする方へと頭を突っ込んでしまうのね。
そのゲームの難しさはきっと、その人が賭場に張る掛け金の多寡による。
たくさん張れて良かったのかも。
次の課題は、人生を使い果たして身軽になることだね。
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