本日は、ZoolooZ 第9曲目
『歩こうよ』 加藤崇之作曲
この曲のリズムは私が決めた。
はじめは普通の8ビートだったのだが、歩くならマーチでしょ、ということになり、エンディング用に全員でスネアを叩いたりもしてみた。
太鼓を叩く人数がだんだん減っていって途切れる、という反戦的な終わりを夢見たが、エンジニア福島にあっさり却下された。第1次大戦後のヨーロッパ映画の雰囲気が欲しかったのだが...。
従って、気を取り直して池上線の商店街などを思い描いてみた。
古い店はこれからどんな風に変わっていくのだろう。
私の知る日本は、これからもまだ、少しは残っていくのだろうか。
9.歩こうよ
商店街が好き。
入り口に、春は桜、秋は紅葉のビニール飾りをなびかせる商店街が好き。
私の家から五分歩くと橋があり、その橋を渡ったところから駅まで、素敵な商店街が続くのだ。
駅前のアーチには「銀河商店街」とある。銀座じゃなくて銀河というのがすごい。宇宙の銀河かと思ったがそうではなく、銀座河下の略なのだそうだ。
駅前のアーチをくぐるとすぐにお茶屋さんがある。ほうじ茶を煎る良い香りが漂う。抹茶アイスのソフトクリームを宣伝する幟。
和菓子屋は、これから商店街を通って知人宅を訪問する人々のために、名物の「ようこそ饅頭」を売っている。五個入り六百円、十個入りだと千二百円。
書店は、禿の爺さんとオタクな孫が店番。爺さんは咳をしながら万引きを見張り、オタクな孫はガムを噛みながら漫画を読み耽っている。
破格に安い輸入衣料品店。キャミソール290円はベトナムものか。結構可愛いが、洗濯できない。
お腹が空いているときは、次の肉屋でコロッケを買い、ソースをたらしてもらう。小判型でなく、俵型でもない、アーモンドのでかいみたいな形。じつは、私はコロッケよりここのウィンナーが好きだ。
八百屋には、声のでかいおじさんが居る。おじさんカラオケ好きかな。唸る演歌に向いた声だ。野菜はいつもここで買う。でも、おじさんが耳のそばで喚かないように注意しないとならない。
最近できたコーヒー豆専門店では、1回に100グラムずつ挽いてもらう。香りが飛ばないうちに、次の新鮮な豆が買える。今日は、キリマンジャロにした。
定食屋は、ショウガ焼き定食と挽肉オムレツが美味しい。上の窓からはいつも鯖を焼くけむりがもうもうと出ている。
酒屋には背の小さいおじさんが居る。いつも重いものを持っているから小さいのかな。でも、きっと力持ち。
蕎麦屋は昔から汁がしょっぱい。色は醤油色。うどんは煮染めのようになる。それでも、いつも結構人が入っている。謎だ。
花屋には私の中学の同級生がいる。高校を出て2年目から自分の家で働き出した。少しの間、青山の有名な花屋さんで働いて、それからパリにも行っていたらしい。銀河商店街にはエレガントすぎるかな、と心配したけれど、ネット通販を始めて、アレンジとかがよく売れている。
商店街の道幅は、車が一台通れるくらい。車と自転車と人が合わさると、いっぱいな感じだ。道路は、横断するというより、斜めに歩いて渡る。
ジグザグ ジグザグ。
豆腐屋は、この商店街では有名な店で、木綿、絹の他に、湯葉、豆乳、がんもどき、薄揚げ、厚揚げを買い求める人がいつも並んでいる。テレビの番組で紹介されたのが契機だそうだ。実際とてもおいしいので、近所の人たちは、朝のうちに予約を入れておき、帰りがけに受け取って帰る。
時々立ち寄る喫茶店は、閉店したスナックの後に、お茶屋の嫁さんが開いた。クリームイエローのドアに赤と緑で「グリーンフィールド」と書いてある。イギリスとかカナダっぽい趣味。けれど嫁さんは名古屋出身らしい。それでメニューにパンケーキがある。クリームチーズを蜂蜜で練ったフィリングが人気。
商店街はまだまだ続く。毎日、いろんな店を見て歩き、時々立ち止まって店の人たちと話し、ちょこちょこ買い物をする。
商店街を歩く家までの30分間、私の心には楽しいマーチが鳴り響く。
歩こうよ、歩こうよ、歩こうよ。
私はこの街が大好きですよ。
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