新しいユニオンの形

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北海道の田舎から、わざわざ東京の大学に出てきたのには、密かな目論見があった。
私は、音楽、それもジャズをやりたかった。
私が上京した頃、成蹊大学は、ちょうどジャズ研ができて3年目くらい。そして、偶然にもその時代、そこには綺羅星のような才能がひしめいていた。
大学対抗バンド合戦で、早稲田、慶応を負かすくらいだった。
そのジャズ研の名は「Modern Jazz Group」、略して「MJG」という。

つい半年前、Facebook上にOBの非公開グループができていて、そこに招待されメンバーになった。
私は、プロになって数年で子育て休業に入ったため、後輩たちの動静を知らない。
歌手休業開けの12年前には、年齢の近いOBが集まってセッションを開いてもらい、その縁で、現在のスタジオ・トライブが立ち上がった。
けれど、それより下の世代となると、どういう方たちがいるのかすら定かでない。

参加してみると、FB上では、会ったことのない後輩たち元気にやりとりしている。
おまけに、少し落ち着き始めた年頃なのか、やたらと演奏したい風なのだ。
そういえば、私が復帰した年齢と同じくらい。
子どもも手を離れ始めて、昔の音楽への情熱が思い出される年頃。

セッションでもやればいいのに、と感じて開催を提案したら、ユニット活動をしている方たちから発表もしながらという提案があり、さらに海外にいるOBの帰省に合わせようということにもなって決定。
成り行き上、私の知っているライブハウスに声をかけた。
箱貸し料金ではなく、ひとり頭最低のチャージで貸してもらえまへんか?

お願いしたライブハウス、吉祥寺のFoxholeは、これまでもショップカードのデザインをプレゼントしたり、ミュージシャンを紹介したりのつながりがある。
幸い、無理なお願いを快く聞いていただけた。

それからしばらく、FB上で誘いあったり、情報のやりとりがあり、準備着々、昨日ついに本番を迎えた。
当初は、30人くらい集まるかな、という予想だったが、結局55人、しばしも休まず9時間に及ぶセッションとなった。
ユニットの演奏は、それぞれ個性豊かな上にしっかりとした仕上がり。
感心する。
セッションでは、プロのミュージシャンも幾人かいて、チャージを払いたいくらいの内容。それがいつまでもいつまでも続く。
現役のメンバーも十数人参加してくれた。
その音楽性や、技術は私たちの頃よりもっと優れていて、日本の音楽が底上げされていることを痛感。
吹奏楽やブラバン出身という一年生が、既に歌もののソロをやれている。

実をいえば、当初FBにはかなりの抵抗があった。
個人情報がダダ漏れだとか、フィッシング詐欺の被害があるかも知れないだとか、周囲には否定的な感想が多かったのだ。
けれど、Twitterで新しい情報の山に感動していた身としては、熱いお湯につま先を浸すごとく、おずおずと足を踏み入れてみようという冒険心もあった。
始めたのは、英語の翻訳教室の先生のお誘いで、FBはとても良いから是非体験して、先生のメッセージもそれで受けて欲しいと言われたこと。招待されたのを機に、思い切ってページを作ってみた。

探されて、居ると分かればお誘いが来る。
それで、MJGのOBグループに入れていただき、今回のリ・ユニオン大セッション大会。
集まった人たちの数や熱気は、じつに、FBがなければ、実現しなかったものである。
例えば、メーリングリストでは無理だったろう。
FBでは、関わる個々のバックグラウンドがほの見え、主旨以外にも共通の話題で盛り上がることもできる。
顔を合わせる前に、かなり仲良くなってしまえるのである。
それは、喋り方(書き方)や、趣味指向の傾向を何となく嗅ぎ取れる効果による。
顔を合わせて、名刺交換するよりも、バーチャルに出会って話しておくことが程良い具合に相手を知る上で役に立つのだ。
会ってみて、写真とイメージが違う人もいれば、もっと好感度が増す人もいる。
けれど、予習できている分、気が楽だ。
出会ってから、緊張して観察する必要がない。

FBは、空間や時間を超えてディスカッションを可能にする場であるのみならず、空気を読み取れる可能性すら持っている。
利用の仕方如何だとは思うが、これはやはり、今までにない全く新しいユニオンの形だ。
ひとつのキーワードの下に数十人が集い、気の向くままにディスカッションを積み重ねる。
つまり、本番前にリハーサル的なことがかなり済んでいる。

個人情報を守るのも理解できるが、自分の感性が許す範囲で開いて繋がり、互いに動くことの方を取れば、今までとは確実に違う世界が形作られる。
SNSは、そうして人の在り方まで変えていくのだろう。

個人情報を公開するについて、慎重でい続けようとは思いつつ、今回のリ・ユニオンの体験から、私は、FBを初めとするSNSに一票入れたくなっている。

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このページは、kyokotadaが2012年7月 9日 17:55に書いたブログ記事です。

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