歌えると教えるはおなじことではないが、縁あって22歳くらいからずっと歌を教えている。その間に、ピアノが少し上達し、楽譜が山ほど溜まり、パソコンで楽譜制作ができるようになり、理論が少し分かり、音声学が少し分かり、心理学が少し分かるようになった。
人の演奏を注意深く聴くようになった。
雑に演奏しないよう気をつける気持ちになった。
色々な人に音楽を好きになってほしいと心から思うようになった。
上手い下手ではなく、楽しむこと、打ち込むことこそが大切だと思うようになった。
音楽の世界にも、スポーツと同様、点数をつけたり、競争したりする場面が多々ある。
受験、コンテスト、オーディション、大会...。
上手い方が気分がいいのだろうけれど、その先に行くともっと上手い人がいる。
そして、勝ち負けを追っているうちに、心から楽しんで歌い、聴くことを忘れたりする。
教える中には、その人を幸せにする願いもこもる。
レッスン時間の半分くらい、悩み相談をするときもある。
世間話でほぐすときもある。
誰しも、歌う以前に生活しているのだ。
スタジオに入ったからと言って、すぐには気持ちが切り替わらないほど大変な時期もある。
コンスタントに、そこに私がいる、ということも大切だと思う。
どんな大変な一週間、一ヶ月であったとしても、私が変わらず同じ場所で同じような顔で待っていれば、少しは楽しいときのことを思い出して頂けるかな、と思う。
そのために、色々なことを工夫してきた。
私自身が大変だった時を思い返し、その時に役立ったことを探したり。
そして、時が過ぎ行くことも忘れずに。
私自身だけでなく生徒みんなのために、少しでも広く技術や知識を学ぶこと。
誰かのために精を出すのは、私の幸福を支えるものでもあると分かる。
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